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2010.09.29

子育て

私の育児経験を振り返って(4)

シンガポール育児体験で、私が気づいたとても大切な事。

私の育児経験を振り返って(3)」からの続きです。

シンガポールは淡路島ほどの小さな国です。1965年、マレーシアから独立した赤道上に位置する淡路島ほどの小さな国がシンガポールです。貿易で賑わい、世界中の金融・ビジネスが集まり、2006年の国際競争力ランキング(IMD:国際経営研究所発表)では3位、2012年では4位と目覚しい発展を遂げています。日本は2006年では17位、2012年27位だそうです。

さて、うちの二人の息子たちは当時7歳と4歳。長男は現地校(日本でいう国立)小学校、次男はインターナショナル・プリスクール(私立)に通いはじめました。

通い始めて最初に驚いたことは、現地校でさえ、いろいろな国の子どもたちがいることです。ターバンを巻いているお父さんやスカーフで顔を覆っているお母さんに挨拶されると、さすがに最初は戸惑ってしまいました。

でも、話はじめると「ゲームばかりしていて困る!」とか、「パワー・レンジャー(日本の戦隊モノ)の影響で戦いごっこばかり!」とかで盛り上がり、親同士の話題はやはりどこの国でも同じなんだぁと、可笑しくなってきます。

このように、シンガポールでは現地校(国立):小学校も、アジア各国からの大勢の留学生を受け入れているのです。お母さんと子どもだけでシンガポールに来ていたり、なかには3・4年生では親元を離れ、一人でホームステイをしながら学校に通う子どもも少なくないという話を聞いてかなり驚きました。

独立して間もない、人種が入り混じっている小さな国が、先進国と肩を並べるためには、まず「言語」の統一と高い水準の「教育カリキュラム」が必要だったのではないでしょうか。

実際、国際通貨基金(IMF)の調査では、2007年のシンガポールの1人当たり国内総生産(GDP)は、すでに日本を抜いていることが明らかになっています。また、小中学生を対象とした国際数学・理科教育調査(TIMSS)でも常に高い評価を得ていいます。

幼稚園でも「音楽」「体操」のほか「算数」「理科」「社会」も

私は滞在中、インターナショナル・スクールの日本語クラスの担当を務めていました。いわゆる「私立」で、当時でも園児数238名のシンガポール最大の幼稚園でした。

シンガポール人の先生もいらっしゃいますが、他の多くの先生方は、オーストラリアをはじめイギリス、カナダ、南アフリカなど世界各国から招かれています。第一言語はもちろん「英語」。

小学校の低学年の時間割では、英語2時間、母語2時間、その他の科目が1時間という構成なので、幼稚園でも母語クラスがあり、中国語・ヒンディー語・日本語と、各クラス担当者はそれぞれの国から招かれていました。

先生の採用の際には、学歴・経歴・教育免許は厳しく確認され、さらに面接で採用の不可が決定されます。直接会うことができない場合でも、電話による面接が必ずあります。

私が在籍中に新たに入園してきた40人の日本人の子どもたちのなかで、日本でインターナショナル・スクールに通っていた子どもはわずかに1人だけでした。英語を習っていた子どもたちは大勢いましたが、「How are you?」と先生から尋ねられても、きちんと自分の名前を言えた子どもはひとりもいませんでした。

海外勤務だからといって、英語を上手に話せるご両親ばかりではありません。でも、こんな子どもたちも1か月もすれば園になじみ、2か月もすれば少し「英語」の言葉がではじめます。

第一言語である「英語」に重点がおかれていることはもちろんなのですが、言語教育では「母語」にも時間がさかれていますし、幼稚園でも「音楽」「体操」のほか「算数」「理科」「社会」もちゃんと用意されています。このように「科目」として書いてしまうと、日本の「早期教育」のようなイメージしますが、その内容はまったく違います。

子どもたちは、先生のお話に目をキラキラさせ、ワクワクする事柄から英語力を伸ばしていく!

たとえば、「大昔、古代人はどのように生活していたのか?」、「どのように野生の動物を捕まえていたのか?」だったり、算数の時間では、自分の足型を画用紙で切り抜き、みんなで持ち寄り長さを測ります。先生から出されたワークシートに従って、園中、片っ端から楽しそうに測りまわるのです。

園長室に跳びこみ、園長先生の机の長さを測った子どももいました。「単位」の認識、まさに「1フィート」です!

「英語で」話しかける先生の言葉は、身近な話題がテーマなので、まだ英語になじめていない子どもたちにもなんとなく通じていて、さらに子どもたちは、先生の「言葉」から確実にさまざまな事柄へと展開していきます。

子どもたちは、とにかく先生のお話に目をキラキラさせて、ワクワク・ドキドキしながら、聴き入るうちに自然と「英語」表現を学んでいるのです。

最初の言葉は、なんと、「Go away !」

こうして子どもたちは、あれよあれよという間に英語力を伸ばしていきます。

ただ、やはり小さな子どもにとって、たとえ母語であっても「言葉」というものは、まだまだ十分に使いこなせるものではありません。息子たちの様子をみていても、日本語もまだ十分ではないし、お友だちの英語もまだ十分ではない。

先生のお話も、いま自分が置かれている状況からなんとなく理解しているだけで、自分の意思や感情を正確に表現できるだけの「言語」能力はまだ持っていません。

年齢的にもまだ「ひとり遊び」のなごりのある時期なので、「言葉」が「日本語」であろうと「英語」であろうとあまり関係なさそうです。先生との信頼関係さえ築くことができれば、この言語環境も特にストレスを感じていないのです。

学校に通いはじめて1か月も過ぎた頃、多くのお友だちもできて、息子も少しは自分の意思を英語で伝えるようになりました。友だち同士でもなんとなく会話が成立している様子です。もちろん、日本の英語教室で何度も繰り返し習う「How are you?」で始まるような会話は、ここにはありません。

お昼寝の前のシャワーの苦手な息子の第一声は、「Don’t want !!」
お友だちと一緒に、絵本を読み聴かせていると、「I can’t see !!」
学校で友だちと楽しく遊んでいるのかと思うと、「Go away !!」

なぜかきれいな言葉よりも、このような表現から身についてしまうのは、(日本でも)幼児期の特性なのでしょうか。いまでもその時の様子を思い出すと、笑ってしまいます。人間は少し追い詰められた状況では、「言葉」が自然と出くるものなんだ、と実感しました。子どもたちは確実に学んでいました。

子どもたちは、興味・関心・驚きを感じるとき、「五感」を通して「体全体」で学んでいました。この様子は、日本の幼稚園では経験できなかったことです。

たしかに、園によって方針はかなり違い「シュタイナー」「モンテッソリー」等の教育理論に基づいて運営されている園もあれば、従来の自由保育の園もあります。いずれにしても、どちらかといえば日本の幼稚園では「季節行事」を中心とした内容を求められている気がします。子ども目線の興味のある話題、たとえば恐竜や昆虫、草花の話題を掘り下げることは、あまりしていないと思います。

シンガポールの幼児教育の現場で、私は始めて子どもの内面から湧き上がってくる好奇心に応える環境が与えられた時、子どもたちの学ぼうとするチカラが最大限に引き出されていく様子を目の当たりにしたのです。

こうして私は、ただ単に「英語」環境に入りさえすれば、自然と「英語」が話せるようになるわけではないということを痛感しました。「何気なく」では、子どもは「なにも」得ることはできないのです。

シンガポールでの滞在で、私と2人の息子たちが教えてもらうことができたのは、学ぼうとする子どもたちの「チカラ」を最大限に引き出す適切な教育者と、母語が英語ではない子どもたちにどのように英語で教えていくのかという適切な教育カリキュラムを受けることができれば、「英語」という言語能力の発達にとどまらず、幼児期からごく自然にものごとを「学ぶ」姿勢を身につけることができる! ということだったのです。

帰国後、さっそく行動に!

この感動を、より多くの日本の子どもたちも同じ経験をすることができたらと考え、帰国後すぐに、日本で二人の息子が長年お世話になっていた幼児教室の先生に、CHESの企画を相談すると、「私も、実際にその授業風景が日本で実現できるのであれば、ぜひ観てみたい!」と、2006年の冬休みの貴重な2週間にもかかわらず、快く教室を提供していただくことができました。これが最初のCHESホリデー・クラス!

その後、春・夏・冬休みごとにホリデー・クラスを開催、2010年9月からは保育施設としてCHESプリ・スクールを開校することができたのです。こうして私は、シンガポールのインターナショナルスクールで、母語が英語ではない子どもたちに実際に使われているカリキュラムを、日本での英語教育の経験を合わせてなんども調整しながら、神戸・垂水で実践してしてきました。

一歩外に出れば100%英語環境のシンガポールで使われているカリキュラムをそのまま単純に日本で使うのではなく、教室から一歩出れば100%日本語の環境で、本当に役に立つカリキュラムにするために、日本での私の英語教育の経験をふまえ改善してきたのです。

あまり英語になじみのない子どもたちから、すこし英語を学び始めた子どもたちまで、楽しく英語で学ぶことができるカリキュラムを限られたクラス時間にあわせて、特別に丁寧に作成しました。こうして出来上がったのが、CHESの基本的なカリキュラムです。

CHES「プリ・クラス」「アフター・クラス」のカリキュラム


2006年以降、ホリデー・クラスからスタートしたインターナショナル・プリスールCHES。その後、認可外保育園として設立、運営をしながら2人の息子の育児をしてきました。

当時のCHESの運営内容や育児状況などを「はてなBlog」にUpしていたのです。古い画像データを整理している際、過去のBlogデータも見つけることができました。当時、私なりに一生懸命育児にたずさわってきた様子が懐かしくて、「育児」カテゴリーの一部に再Upしていくことしました。

「せめて語学力だけでも身につけて欲しい」と、大学受験までに英検準1級、中検3級まで育ててきた息子たちは2人そろって「会社員になる才能はない」「バスケを穏やかに続けたい」と宣言、進路指導の忠告も聞かず、文系ではなく理系の学部へ進学。「国家試験浪人だけは、絶対やめてね」と、いまなお相変わらずハラハラどきどきしていますが、これも「親心子知らず」なのでしょう。

すでに10数年経過し、いま振り返ってもドタバタした子育てでしたが、現在、当時の私と同じように、子どもたちには「幼い間に無理せず語学力を身につけて欲しい」と、一生懸命育児にたずさわっているママ・パパたちに少しでも楽しんでいただければ幸いです。

International Preschool CHES
Deputy head teacher
幼稚園教諭一種免許/保育士資格
小学校英語指導者資格
(Elementary School English Teaching License)
Masami Morimoto