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非認知能力とは?「私たちは子どもに何ができるのか」

非認知能力とは?「私たちは子どもに何ができるのか」

最近「私たちは子どもに何ができるのか―非認知能力を育み、格差に挑む」を読んでいました。

当初この本が気になった理由は、「非認知能力」というキーワードです。2020年度の学習指導要領改訂以来、CHESのテーマでもある「ライフスキル(よりよく生きる力)」や「非認知能力」という言葉もよく目にしたり耳にする機会が増えてきましたよね。

「非認知能力」とは、粘り強さ(Grit)、誠実さ、自制心、楽観主義などの「性格の強み」。本書では、長期にわたる心理学分野の研究から、非認知能力の高い子どものほうが学歴も高く健康状態がいい。だからこそ子どもたちの成果を改善するためには、非認知能力が決定的に重要になるとしています。

著者は子どもの貧困と教育政策を専門にするジャーナリストです。教育家ではないので、思い入れの強い方法論や読後心地よくなるような成功物語の列挙ではなく、アメリカの富裕層と低所得層の子どもの教育格差を縮めるために「結局どうすればいいのですか?」の答えを探す試みに焦点を当てていきます。

「結局どうすればいいのですか?」

この答え、つまり「非認知能力」を育む再現可能な方法論が確立されているのであれば、ぜひ確認したいと思い読み進めていきました。

興味深い成功例がいくつも紹介されていますので、これから育児にたずさわる保護者の方、もっと楽しくお子さんとかかわりたいと思案中の保護者の方にもぜひご一読をお勧めします。

しかし、いくつかの成功例は紹介されているものの、「模倣して広める手法は社会福祉や教育の分野ではうまくいくわけではない」。「成功例のそれぞれの核となる原理、その共通点をみつけることが本書の目的」としているだけあって、その答えはシンプルではなさそうです。

「読み書き計算を習得するプロセスとは似ても似つかない」

答えがシンプルでない理由が、まさにこれです。読み書き計算のような「認知能力」、もちろん英語を学ぶ基礎(フォニックスやサイトワードなど)も、あの手この手で子どもたちの興味を引き出しながら反復練習を通して教えることができます。一方でGrit(粘り強さ)、誠実さ、自制心、楽観主義などの性格の強みである「非認知能力」を教えて身につけるとなると、たちまち疑問がわいてくるのです。

まさに最近私が最も気になっている疑問。非認知能力は、生まれ持った性格なのか、家庭環境により自然と育まれるものなのか、あるいは成長過程の子どもの意思で身につけていくものなのか?…という疑問です。

これらの疑問について、本書では「不利な条件下にある子どもたち」の環境要因として「ストレス」をはじめ「親」、「家庭への介入」等を順に分析したうえで「成功例のそれぞれの核となる原理、その共通点」を探っていきます。

成功例として登場するゲームのチェス(CHESではなく😗)のコーチのエピソードが、私は一番好きです。特にこの一文。「生徒たちの試合を彼らと一緒に熱心に分析し、彼らがおかしたミスについて詳細まで素直に話して、どうしたらよかったのかを理解させるのだ」。そして「彼らのチェスの能力だけではなく生活全般への取り組み方まで変えた」。

ごくふつうの公立高校のチームが、コーチの指導により全国選手権でも勝ち上がる強豪に変貌する様子です。前著「成功する子 失敗する子」にも登場していたのですが、非認知能力という性格の強みを育むための「手段」は、子どもたちの身近にあるどんな事柄でも構わないのだと気づき勇気がわいてきます。

「試合」という言葉を「英作文」に置き換えても、「プレゼンテーション」にしても、「スポーツ」でも、もっと幅ひろく「日々の行動」に置き換えても重要なことは同じに思えます。結果を一緒に熱心に分析し、ミスがあったとしても解決策を理解させる大人がそばにいるだけで、子どもたちは成長できるのだと。

非認知能力は、子どもをとりまく環境の産物

著者の結論は、「非認知能力を教えることのできるスキルと考えるよりも子どもをとりまく環境の産物であると考えた方がより正確であり、有益でもある」。

子ども自身への介入ではなく、まず環境を整備するべきだと。そして教育政策を専門にするジャーナリストとして、解決策としての3つの提案で本書は締めくくられています。

3つの提案のうち1つは政府の政策を変える提案です。乳幼児から成長過程までの管轄部署が分断されている「凝り固まった学校や実践の多くを根本から見直しつくり直す必要がある」。この点は日本も状況は同じです。就学前の保育園は厚生労働省、小学生以降は文部科学省と、たて割りが存続しているので変化を期待するのは難しそうです。

それでも最近、日本では少子化対策の大号令のなか、保育・教育にかかわる取り組みが次々と発表されています。ここで気になるのは、手間のかかる育児をまるで親のコストととらえ、そのコストさえ削減できれば、少子化対策になるかのような施策に偏っている点です。

しかし本来、ほんの少しの手間、そのコストと思える中にこそ、子どもたちの非認知能力である「性格の強み」を育む環境を築くきっかけが多くあるのではないかと思います。

実際、残りの2つの提案は、「私たちが考え方・行動を変える必要がある」。まずは、声の調子、話を聞く姿勢、ほんの少し時間をとること、大人にとってたいして重要でないと思える向き合い方を少し工夫することで、子どもたちの人生の軌跡がまさに変わり始めるのでしょう。

本書はあくまでもアメリカの低所得層の子どもの教育格差を縮めるための提言ですが、このまま育児をコストととらえるかのような少子化対策が続くのであれば、日本でも親との強い結びつきが十分でない「不利な条件下にある子どもたち」が増えていくのではないのかと気がかりになります。

3歳未満の時期こそが子どもの発達を促す絶好のチャンスでもあり危機が潜む期間でもある

これは本書「解決策」のなかの一節です。

親から良好な反応の得られる安定した環境で育ち、帰属意識と目的意識の持てる学校に通い、意欲をかきたて支えてくれる教師の授業を受けられるなら、彼らはすくすく育ち、将来よりよい人生を送れるチャンスも飛躍的にのびる。

CHESには「英語」という明確な軸が1つあることで、教室への帰属意識や目的意識を園児・生徒はもちろん教師、保護者の方々とも共有しやすい環境にはあります。また本書に紹介されている「ディパー・ラーニング」とされる探求型の授業内容も、100%とはいえないにしろ実践できていると思います。

しかし1歳半からの「プリ・クラス」に始まり「アフター・クラス」に通う生徒と高校受験前まで長く接するなかで、日々成長していく子どもたちを見守り続けていると、確かにそれぞれが持つ個性の差はあります。

非認知能力とよばれる「性格の強み」は、生まれ持ったものなのか、家庭環境なのか、成長過程で獲得していけるのかという疑問は、正直なところ、本書を読み終わったいまでもすっきり解消できたわけではありません。

それでも、「3歳未満の時期こそが子どもの発達を促す絶好のチャンスでもあり危機が潜む期間でもある」という本書の言葉を胸に刻み、再現可能な「方法論」が見つかることを期待しながら、これからも試行錯誤を繰り返しCHESの「環境」を整備、改善していく以外の方法はないのだろうなぁと思います。

本書に登場していたコーチは、生徒たちがチェスのゲームで勝ち進むために、コマの進め方、定石を何度も細かく指導していたはずです。しかしコーチが生徒たちに本当に手に入れて欲しかったものは、勝利だけではなかったはず。

私たちも、CHESにかかわるすべての子どもたちには、英語で学んだ「可能性」を人生の「成功」にかえて欲しいと願っています。そのためにもCHESの保護者の方々とも内容を共有したいと思った1冊ですので、ご紹介させていただきました。

International Preschool CHES
Deputy head teacher
幼稚園教諭一種免許/保育士資格
小学校英語指導者資格
(Elementary School English Teaching License)
Masami Morimoto

改めてご紹介しておきます

👍 ポール・タフ私たちは子どもに何ができるのか―非認知能力を育み、格差に挑む」 (英治出版)

各課題ごとに話が進んでいくので、結論の繰り返しが多いようにも思うのですが、丁寧に事例を積み上げて検証していくので、全体を通して納得できる内容です。これから育児にたずさわる予定の方、もっと育児を楽しみたい方にはぜひご一読をお勧めしたい1冊です。

👍 ポール・タフ成功する子 失敗する子―何が「その後の人生」を決めるのか』 (英治出版)

非認知能力については、前著であるこちらの方が分かりやすいかもしれません。あわせてお読みいただくのも良いのかもしれません。

👍 アンジェラ・ダックワースやり抜く力 GRIT(グリット)―人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』(ダイヤモンド社)

非認知能力という言葉より先に知ることになったのが「GRIT(やりぬく力)」という言葉でした。きっかけは著者が登場していたTED。たしか息子が大学受験の勉強をしていた頃だったと思います。

私にとってこの本の内容は本当に鮮烈でした。受験勉強に煮詰まっている息子に伝えたいことやかかわり方も少し変わった気がします。お子さんがいらっしゃる保護者の方には、なによりもまず最初に読んでいただきたい1冊です。

検索してみると、まだ著者のTEDでのプレゼンテーションが残っていましたので、こちらもあわせてご紹介しておきます。


子どもたちの未来を拓くCHES「プリ・クラス」入園説明会、ぜひご参加ください。

まだまだ暑い日が続いていますが、この暑さに負けないように、来年度にむけての入園説明会を9月に開催します。

育児・教育環境として、なぜ? CHESなのか。1歳半からの「英語で」ひらく子どもたちの未来について詳しくお話したいと思います。

1歳半からのお子さんの貴重な時間を将来にむけてしっかり活かしてあげたいとお考えのママ・パパは、ぜひ「インターナショル・プリスクールCHESの入園説明会」にお越しください。

詳細は👇いますぐ、こちらからをご参照ください。説明会でお会いできることを楽しみにしています。

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